設立16年目を迎えた日本理学診療医学会は、「日本運動器リハビリテーション学会」として、再出発いたします。
この10数年の医療を取り巻く環境は大きく変化して参りました。我が国は高齢社会となり、社会保障制度の改革が求められ、高齢者の健康、介護を維持し、高齢者の健康寿命を延伸するシステムの整備、すなわち要介護状態(閉じこもり、寝たきり)の予防が重要な課題となりました。要介護状態となる主要な原因は脳卒中、運動器疾患、痴呆であります。社会が運動器疾患の治療と運動器疾患患者の機能維持を強く求めていると言えましょう。
運動器疾患の治療の第一選択は保存的治療であります。わけても、運動療法、物理療法、作業療法、装具療法などリハビリテーション的治療手段が多用されております。運動器疾患治療に用いられるリハビリテーション的治療は脳卒中、痴呆に用いられるものとは異なります。運動器疾患治療と患者の機能回復、維持のためのリハビリテーション治療を確立し、進化させる必要があります。
近年の基礎医学研究の急速な進歩により、物理刺激、運動の骨関節組織、器官、生体に与える影響に関する多くの新知見が蓄積されております。それらの知見の中には、新しい技術の発展を促すもの、これまでの我々の常識を覆すものなどがあります。基礎医学の進歩、時代の要請に基づいて、運動器のリハビリテーション治療を再構築する時期にありましょう。
今日、EBMの概念に基づいた患者本位の科学的根拠が医学、医療の実践場面において求められております。EBMは患者の生活、活動を主観的、客観的にとらえるアウトカムを含んだ科学的根拠を求めております。診療報酬点数においても、治療効果について科学的根拠が求められています。EBMの要求水準を満たした臨床研究を自らの手で行う必要がありましょう。
本学会は、これらの変化に対応すべく努力を重ねて参りました。2000年より診療報酬等検討委員会が理学療法の有効性に関する臨床試験の検討に着手し、2001年には日本整形外科学会、日本臨床整形外科医会と合同で委員会を立ち上げました。2002年には変形性膝関節症のQOL評価表を作成し、2003年には多くの会員のご協力を得て、「変形性膝関節症に対する大腿四頭筋訓練の効果」の無作為化臨床試験を行い、中間結果ではありますが、大腿四頭筋訓練はNSAIDに劣らぬ効果のあることを明らかにすることができました。
これらの活動は、「理学診療医学(physical medicine)」を考え直す機会となり、学会名変更が検討されました。骨関節疾患患者の病態、運動障害、生活障害の解明を進め、最新知識とEBMの手法を駆使して、新しい骨関節疾患患者の治療、介護ケアを含む治療理論を構築し、実践を通して、医療制度改革にも役立てていくことが我々の責務と考え、「運動器リハビリテーション学会」という学会名への変更が検討されました。「運動器」は「運動器の10年」にありますように、骨関節を広い視点からとらえたものです。今日なお「リハビリテーション」という語は多義的ではありますが、医療分野においては、その意味は機能回復、維持のための医療的介入に限定されつつあります。運動器疾患による機能と生活の障害の軽減、機能の回復、維持をはかる医学・医療を表現する用語として、「リハビリテーション」が適当と考えました。また、学際的活動が必須と考え、医学会ではなく「学会」といたしました。
先般、全評議員の皆様に学会名を「日本運動器リハビリテーション学会」とすることにつきご意見をうかがいました。理事、評議員101名中、94名から回答をいただき、賛成が87名、反対が4名、どちらでもないが3名でありました。反対意見の主なものは学会を運動器のリハビリテーションという狭い分野に限定することへの反対、学会名や学会誌名を短期間で変更することに対する反対、日本リハビリテーション医学会との関係を考慮しての反対でありました。
理事会は、上記の結果に基づき学会名を「日本運動器リハビリテーション学会」とすることを総会に諮り、学会名の変更をお認めいただきました。
過去10数年、我が国においては、本学会が骨関節疾患患者への主要な保存療法である理学療法の基礎と有効性の検証に取り組んできた唯一の学術団体であります。
運動器疾患の治療、リハビリテーションを確立し、進化させるためには、従来にも増して、生物学、基礎医学、臨床医学、工学、公衆衛生、コ・メディカル、体育などを含めた関連分野の学術・技能の結集が不可欠であります。従来の学会の枠にとらわれない学際的な学術団体であると同時に、社会的な発言力を持つ学会として発展していかなければならないでしょう。
我々の目的を達成するため、1人でも多くの会員を迎え、力を結集して行かなければなしません。学会活動へのご理解と積極的な参加、ご協力をお願い申し上げます。 |