一般社団法人 日本運動器科学会

ロコモ関連用語英語対訳表について

石橋 英明
日本運動器科学会ロコモ関連用語英訳ワーキンググループ委員長
医療法人社団愛友会伊奈病院 副院長

趣旨とねらい

2007年にロコモティブシンドローム(以下、ロコモ)が提唱されて以来、ロコモの普及啓発や予防施策が続けられ、そしてロコモに関わる様々な基礎的臨床的疫学的研究が遂行・報告されてきた。ロコモは日本発の概念であるが、関連する論文は和文だけでなく、英語論文も2022年までに200編を超えて刊行されている。今後もロコモに関する研究が進み、数多くの英語論文が発表されることが予想される。

一方、今までに刊行された英語論文において、ロコモ関連用語については論文ごとに異なる英語表記が使われていることが多く、統一のない状況である。これは英語でロコモを理解する人々にとっての大きな障壁になると考えられる。

このような状況を踏まえて、2022年8月に日本運動器科学会ではロコモ関連用語の英語対訳表を作成するワーキンググループを創設した。既報の全英語論文を総覧し、重要なロコモ関連用語の英語表記の候補を挙げて、メンバーで議論を重ねて推奨するべき英訳語を決定した。

本学会がロコモ関連用語の英語表記の推奨を提示し、関連他学会とも連携して多くの医師、医療関連多職種、研究者と共有することで、今後の英語論文においてのロコモ関連用語の英語表記が統一されていくと思われる。その結果、海外の医療者、研究者へのロコモの理解が広がることが期待される。

2021年に、ロコモの概念、評価、介入、関連疾患などを総合した「ロコモティブシンドローム診療ガイド2021」が出版された。海外においてロコモの理解を広げるために、現在「ロコモティブシンドローム診療ガイド2021」の英訳版の出版も計画され、作業が進められている。この英訳版の作成にも今回の対訳表が役立つ見込みである。

英語対訳表作成の進め方

ロコモ関連用語英語対訳表を作成するにあたっては、前述の通り、2022年8月に「日本運動器科学会ロコモ関連用語英訳ワーキンググループ」(以下、WG)が組織された(表1)。

まず、WGで訳語を決定すべき24個のロコモ関連用語を決定し、今までに刊行されたロコモに関する約200編のすべて英語論文を委員で分担して確認し、ロコモ関連用語に該当する語句を抽出した。次いで、用語ごとに該当する英語語句の使用論文数を数え、頻度順にリスト化した。その上で、WGにおいて最も適切と思われる英語表記を協議した。検討にあたっては、以下のことに留意した。

  • 使用頻度の多い英語表記は重視するが、頻度だけで決めることはしない。
  • 用語によって、ひとつの英訳語に決める方が良い場合もあれば、複数提示する方が良い 場合があると考えられ、必要に応じて複数の英訳語を提示することも考える。
  • 海外から発表された論文の用語は尊重する。
  • WGで一次候補を挙げたのち、 複数の日本人医師などに意見をもらい、その後WGで再 検討したのち、最終決定をする。

以上のような進め方、留意事項により、ロコモ関連用語英語対訳表が決定した(表2)。

今後、ロコモに関連する論文、あるいは文中にロコモ関連用語が含まれる論文を英語で発表する際の参考にしていただければ幸いである。

最後に、英訳語の推奨決定に重要なご助言をいただいたNTT東日本病院国際診療科の佐々江 龍一郎先生、および林 宏明先生、東京医科歯科大学統合国際機構 グローバル企画・推進部門のJanelle Renee Moross先生に深謝いたします。

表1 日本運動器科学会ロコモ関連用語英訳ワーキンググループ(所属はワーキングループ活動時)

委員長 石橋 英明
(医療法人社団愛友会伊奈病院 副院長)
委 員 飯高 世子
(東京大学22世紀医療センター ロコモ予防医学講座 特任助教)
大場 哲郎
(山梨大学医学部整形外科学講座 講師)
小川 貴久
(東京医科歯科大学大学院 医療政策情報分野)
加藤 仁志
(金沢大学医学部整形外科学講座 助教)
三上 幸夫
(広島大学病院 リハビリテーション科 教授)
森岡 秀夫
(国立病院機構東京医療センター 整形外科 科長)
山田 恵子
(埼玉県立大学保健医療福祉学部 准教授)
スーパーバイザー 大江 隆史
(NTT東日本関東病院 院長)
竹下 克志
(自治医科大学整形外科 教授)

表2 ロコモ関連用語英語対訳表

日本語 英語
移動機能 mobility
ロコモ LS

*論文や専門書籍の中では、初出は”locomotive syndrome”、以後はLSと略語で示し、LOCOMOなどの短縮表記は使用しない。ただし、一般向けの場合や、論文中でも著者の意図などによってLOCOMOと表記することは妨げない。

ロコモ度テスト locomotive syndrome risk test

*ロコモ度テストはロコモの判定法であり、ロコモのリスクを評価するテストではないが、使用論文数が多く、ほとんどがこの表記であることから決定した。

2ステップテスト two-step test
2ステップ値 two-step test value
開眼片脚立ち single-leg standing with eyes open
片脚40cm single-leg stand-up from 40 cm height
failure in single-leg stand-up from 40 cm height

*文脈によって、difficultyまたはfailureのいずれかを用いて良い。

両脚20㎝可 success in two-leg stand-up from 20 cm height
片脚起立時間 single-leg standing time
立ち上がりテスト stand-up test
歩行速度 walking speed
臨床判断値 category
ロコチェック Loco-Check (Loco-Check questionnaire)

*英語の記述の中で、”locomotion check”は用いないこととし、固有名詞としてLoco-Check (または、Loco-Check questionnaire)を推奨することとした。

ロコモ25 25-question geriatric locomotive function scale (GLFS-25)
ロコモ度 locomotive syndrome stage (LS stage)
ロコモ度1, 2, 3 LS stage 1, 2, 3
スクワット squats
ヒールレイズ heel raises
フロントランジ forward lunges

*日本語通りに”front lunges”の語用もあったが数が少なく、一般的には”forward lunges”が使われている。日本人には「フロント」の方が理解しやすいと思われるため、日本語表記と英語表記が不一致であるが許容した。

ロコモーショントレーニング locomotion training
ロコトレ locomotion training (LT)
*「ロコトレ」については、日本語的短縮表記はせず、LTと略すこととした。
運動器
  • ① locomotor system
  • ② locomotive organs
  • ③ musculoskeletal system

*運動器を意味する英語として、一般的には locomotor systemが使われることが多い。しかし、ロコモの論文においてlocomotive organsも多く用いられており、また日本整形外科学会の用語集にはlocomotive organsが採用されているため、第2の用語とした。さらに、日本運動器科学会の英語名は、Japanese Society for Musculoskeletal Medicineであるため、musculoskeletalも第3の用語として挙げた。

運動器疾患
  • ① diseases of the locomotor system
  • ② diseases of the locomotive organs
  • ③ diseases of the musculoskeletal system
運動器の障害 disorders of the locomotor system
ロコモは運動器の障害により、移動機能が低下した状態である Locomotive syndrome is a condition of reduced mobility due to disorders of the locomotor system
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